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★ アトムと私
★
〜母と離れ一人暮らし〜
「食事、入浴 ヘルパーが支援」
同志社大学に入学後、私は母とアトムと京都府京田辺市の一軒家で暮らし、父と大学生の弟は、岐阜の実家で2人で生活していた。美容師の母は、指を骨折してもハサミを握るほどだったが、事故後は美容院を閉めていた。
学生生活に慣れてくると、母と一緒の生活から卒業したいと思うようになった。「自立するとともに、母にも仕事に戻ってもらいたい」との思いが募った。
大学3年から、京都市の今出川キャンパスでの講義が中心になる。京都市内に引っ越すことになり、思い切って、一人暮らしを切り出した。
「車いすから落ち、アトムが電話を運んでくれたって誰を呼ぶの?」「包丁も握れないのに、どうやってご飯を作るの?」「お風呂は?」「友達を呼んでも、いつでも来てくれるもんじゃないよ」。母の反対は当然だった。
2年の冬休みに実家へ帰省した時、活路が開かれた。親交のあった頸髄損傷者連絡会岐阜の上村数洋快調(当時)の奥さんが、障害者本人が福祉サービスを選ぶ支援費制度が4月から始まる、と教えてくれた。
京都市で自立生活相談に乗っている障害者地域生活支援センター「きらリング」に行き、市内の訪問介護事業者一覧表をもらった。順番に電話をかけ、2業者から承諾を得ることができた。
「朝夕決まった時間にヘルパーさんが来て手伝ってくれる。口があるから説明やお願いはできる。大丈夫だから」
ヘルパー制度と1週間の予定を母に伝えると、納得してくれ、母自身も美容院の再会を考え始めた。
マンションで母と別れて生活を始めたのは、3年の秋。ほぼ毎日、朝夕にヘルパーが来てくれ、食事や入浴の介助をしてくれた。戸締まり、火の元を何重にもチェックし、携帯電話を枕元に置いた。「何かあったときのために」とk同じ大学に通う友人の池田かおりさん(25)には鍵を預かってもらった。
「一緒に太巻きずしを作った時、手先が不自由だと料理も大変なんだと改めて知った。ヘルパーがいる間はアトムだけで大丈夫だろうかと心配だった」と池田さん。
障害者仕様の車を運転して通学した。運転免許は事故後20歳で取った。アクセルとブレーキのレバーを左手で操作し、ハンドルは右手にベルトで固定して運転する。最初は心配してキューキューと鳴いていたアトムも、次第に運転でも寝るようになった。
少しずつだが、自分の生活が組み立てられるようになった。(館林千賀子)
【読売新聞/2007年10月23日 くらし面より】
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